麻田藩第2代藩主青木重兼公が万治2年(1659)に開創した佛日寺に自ら奉納したもので、16幅ある。各縦約70・0センチメートル横約43・0センチメートルの絹本著色画である。
佛日寺本は温和な比丘相の羅漢、穏やかな表現の人物・鬼神・樹木・岩などから、
基本的に大和絵系と判断されるが、羅漢のなかには顔が角立ち、髭が生々しい武骨な者もみえ、明らかに漢画系統の影響を受けていることがわかる。
また、これまで大和絵系にさえ描かれていなかった桜を描いてるところからも、全体に変容していることが推測される。
仏日寺本の図様は、東京国立博物館本、斑鳩寺本のいずれの系統にもみられず、まったく別系統の図様のようにもみえるが、
画面の一部の要素を変化すれば共通する図様になるものもあり、これの系統についてはより検討は要する。
制作期については、鎌倉時代の吉祥園寺本より描写に流麗な趣があり、また応永30年(1423)の西福寺本ほど省略化が進んでおらず、
彩色にまだ明るさがあるところから、制作はこの間の南北朝時代と推測される。この種の大和絵系十六羅漢図はあまり多くはなく、貴重である。
執筆者 吉原忠雄氏(大阪大谷大学)
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