●周利槃特<しゅりはんどく>』に思う

79.令和2年9月22日(火) 秋季彼岸会の一席
 演題「周利槃特<しゅりはんどく>』に思う」 住職(服部潤承)


 残暑お見舞い申し上げます。新型コロナ第二波も終息に近づいていると言われていますが、陽性の感染者はまだまだ多いようでありますので、このようなソーシャルディスタンスをしております。三密をさけ、短時間で終りますが、決して疎かにしたのではなく、「量から質」に転換しております。

 さて、漫画に赤塚不二夫さんの『天才バカボン』があります。「バカボン」はNHKのちこちゃんの言う「ぼーと生きてんじゃねぇよ。」のような人ではありません。サンスクリットの「バカヴァッド」で「覚れる者」つまり『仏陀』を意味します。『天才バカボン』の悟りの境地は「これでいいのだ。」であります。禅語で言う「知足<ちそく>」「吾唯足知<吾唯足るを知る>であります。俳句で言うと小林一茶の「めでたさも中ぐらい也おらが春」であります。

 主人公の『天才バカボン』の他に、電気屋の社長で下駄ばき和服姿、「クリーン・クリーン」と口ずさみながら道の掃き掃除をしている『レレレのおじさん』が登場いたします。そのモデルがお手元の『琉璃燈』34号にでています。

 7ページから8ページに黄檗山仏像探訪L半託迦尊者<ぱんたかそんじゃ>で、37ページから38ページに黄檗山仏像探訪M注荼半託迦尊者<ちゅうだぱんたかそんじゃ>です。

 この二人は、兄弟です。Lの「ぱんたかそんじゃ」がお兄さん、Mの「ちゅうだぱんたかそんじゃ」が弟です。この弟が『レレレのおじさん』のモデルです。兄弟二人は、母親が実家に戻る途中、路上で生まれましたので、「ぱんたか」と命名しました。

 二人の体型は似通っていますが、面持ちが随分違います。お兄さんは何かに怯え苦しんでいる形相をしているのに対して、弟さんは静かな安心の境地に至ったお姿であります。お釈迦様の弟子に許されましたが、もの憶えが悪く、勉強ができません。お釈迦様の話を聞いても理解できませんが、ぼんやりと聞いているだけで、幸せだったそうです。

 お釈迦様から与えられた一枚の布で「垢<あか>を流し、塵<ちり>を除く」と唱えながら、精舎を掃除しました。そして、いつの間にか心の汚れ『貪・瞋・痴』まで落とすことができました。

  @貪<とん>とは、自分の好むものをむさぼり求める貪欲<とんよく>。

  A瞋<じん>とは、自分の嫌いなものを憎み嫌悪する瞋恚<しんい>。

  B痴<ち>とは、ものごとに的確な判断が下せずに迷い惑う愚痴<ぐち>。

 この優しく穏やかなお顔が37ページ・お姿が38ページに出ています。



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