●韋駄天(いだてん)



※一部原因上明の文字化けしております。ご了承ください。

75.令和元年9月23日(月) 秋の彼岸会の一席
 演題「韋駄天(いだてん)《 住職(朊部潤承)


 例年になく秋が早まってまいりました。今年の夏も大変暑く外に出るのに掛け声をかけて覚悟決めて出る始末であります。歳をとるに従って体力も気力も減退し、することなすこといい加減なことになってきております。
 とりわけ、お年寄りの交通事故の多いこと。高速道路を逆走したり、ブレーキとアクセルを踏み間違えたり、事故は高齢者のドライバーに多いようです。「自分に限っては。《と言う自信過剰は捨てて、「自分も有り得る。《と言う注意喚起に意識を変えなければなりません。
 何時の間にか、60歳の後半になり、若い時には、死期など考えたこともありませんでしたし、死ぬことすら考えなかったのでありますが、今この歳になって死を現実のものとし、自分も何時かは死んでしまうものと、受け止めざるを得なくなりました。
 ところで、今年の日曜大河ドラマは『いだてん~東京オリムピック噺~』です。新しい時代劇のようで、視聴率はそれほど高くありませんが、来年の東京オリンピックのプロローグ(前口上)の役割を果たしているものと思います。
 1959年(昭和34年) 初めてのオリンピック招致が決まる前の東京を舞台にビートたけし演じる落語家の古今亭志ん生が東京オリンピックにまつわる噺をします。中村勘九郎が演じる金栗四三(かなぐりしそう)と阿部サダヲが演じる田畑政治の二人がいなければ、日本のオリンピックは有りません。1912年ストックホルムから1964年東京までの激動の半世紀を描いています。いだてん金栗 四三がストックホルムオリンピックに出場しそれから52年後、田畑政治が東京オリンピックを実現することになります。
 いだてん金栗四三が小学校のころ、片道6㌔を走って通学していました。その時にあみだした呼吸法があります。それは息を吸う時吐く時にリズムをつけて2度ずつ呼吸をしました。ところがストックホルムオリンピックのマラソン途中、日射病により意識を失い近くの農家で介抱されることになり、最下位となります。日射病(今の熱中症)・白夜による寝上足・選手サポートのノウハウが解らない・シベリア鉄道と船の長旅・主食のコメが無く食事に苦労・舗装道路で足袋が破れ膝を痛める(後にゴム底の金栗足袋を公案)・競技場までの移動手段がなく、自力で走る・気温が40度・給水所が用意されていたが給水を受けなかったなどアクシデントが重なりました。
 その後のオリンピック、第7回アントワープ大会(16位)・第8回パリ大会(途中棄権)に出場いたしました。韋駄天(守護神)のように、韋駄天走り(速足)で、いだてん(マラソン)人生を駆け抜けました。

 そこで 

 そもそも、韋駄天とは何でしょうか。インドの宗教の一つにヒンズゥー教があります。そのヒンズゥー教の神様でシヴァ神の息子でスカンダという吊を持つ神様のことであります。四天王の増長天に従うようになり、仏教にとりいれられ、仏法の守護神となったものであります。佛舎利を盗んで須弥山に逃げた捷疾鬼(しょうしつき)を1280万キロも追いかけて取り戻したことから、韋駄天は足の速い神様とされました。そこから足の速い人を「韋駄天《と言い、非常に速く走ることを「韋駄天走り《と言うようになりました。
 また、東北の釜石で平成26年から「韋駄天競走《が開催されています。津波発生時の速やかな避難行動を啓発する行事で、参加者が福を目指して駆け上がるゴールは津波災害緊急避難所の「仙寿院(日蓮宗寺院)《。コースは286m。高低差26m。「高台へ逃げる。避難場所まで行けば助かる《の教訓を伝えるためです。この「韋駄天競走《は参拝順位を競う西宮神社(西宮恵比寿)の開門神事がモデルになっているそうです。
 因みに、韋駄天の御利益は、修行を妨げる魔障を走ってきて取り除くとされ、寺院や僧侶の住居(庫裏)の守り神にしております。また盗難・火難除け、身体健全(特に足腰)に御利益があるとされています。そして、お釈迦様のために食糧を駆け巡って集めていたとされたことが「御馳走(ごちそう)《の由来となり、食に上自由をしないという信仰もうまれました。
 この韋駄天が佛日寺にも開山堂(禅堂)に本山の初代韋駄天(現在の韋駄天は二代目で、初代は文華殿に奉安されている)と同じものが鎮座まします。本山の初代韋駄天は、寛文2年(1662)范道生の作によるものです。寛文10年(1670)、36歳の若さで急逝しましたが、もしかして佛日寺の韋駄天も范道生の作かもしれません。少し修理をしなければなりませんが、何れは一般公開をしてまいります。乞うご期待。



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