●八風吹けども動ぜず

59.平成27年9月23日(土) 秋季彼岸会の一席
 演題「八風吹けども動ぜず」  住職(服部潤承)


 来る9月27日は、仲秋の名月でございます。毎年9月から10月にかけてお月見には絶好の季節であります。
 「月々に月見る月は多かれど月見る月はこの月の月」と言う短歌がございます。一年中、月を見ることができますが、9月10月は秋が深まって来るに従って、地上の空気が冷やされ地中の水蒸気が上昇しなくなり空気が透き通ってまいりますと、月も輝いてまいります。まるで暗闇を照らすスポットライトのように、柔らかく優しい光を放っています。月自身は何も光を発しているわけではありません。太陽の光を受けて反射しているだけでありますが、太陽のように光を発しているように見えます。
 わたくし達も自ら輝くことができなくても、他から光を受けて輝くことができるのであります。いずれにしましても、秋は地上の空気が澄んで、青空が天上に広がり晴れ晴れとする良い季節でございます。周囲の状況・環境がどれほど大切かが解ります。周囲か゛良ければ其処にいるもの・あるものすべてが清らかになってまいります。
 赤ちゃんの周辺の人たちの顔は、笑顔の顔・顔・顔。障がい者の周辺の人たちの顔は、優しさの顔・顔・顔。お年寄りの周辺の人たちの顔は、柔らかい顔・顔・顔。その反対に、不良少年の周辺の人たちの顔は、険しい顔・顔・顔。私たちの心の状態がそのまま周囲に反映し、影響し合っています。
 ところで、心の状態と言えば、徒然草の作者《吉田兼好》は、137段で「花は盛りに月は隈なきもののみを見るものかは」と言っています。お花見は満開の時だけ、お月見は満月の時だけとは限りません。お花見は桜の咲く前でも、散った後でもできますし、お月見は満月の前後や三日月でも、雲が低く垂れ込めていて月が見えない時もできるものであります。私の心で想像を膨らませればいつでもどこでもお花見・お月見ができるものであります。要は私たちの心の有り様であります。
 そうは言うものの、なかなかそうは行かないものであります。八風が吹きますと私たちの心の有り様は動揺してしまいます。そこで、八風とは一体何でしょう。



 この八項目が人の心をもてあそぶ障害として、八風と言っています。この八風が吹きますと、たちまち動揺するのが私たちの心であります。雨が降ろうと、風が吹こうと、鬼怒川が決壊しようと、天上の月は揺るぎなく輝いています。この月の様相こそが私たちに備わっている自己本来の姿、不動の心でありますが、気付いていないのが現状なのであります。
 ご案内がございます。
 9月27日(日)午後2時より、石橋・浄土真宗正福寺のナムのひろば文化会館で池田市仏教会主催による市民公開セミナーが開催されます。久安寺・寿命寺のご住職と私佛日寺が30分ずつお話しをいたします。テーマは「お坊さん 老い を語る」です。宗派の違うお寺で、宗派の違う法話を聞いてみてはいかがでしょうか。お奨めいたします。
 10月16日(金)〜12月6日(日)・午前10時〜午後6時・池田市立歴史民俗資料館で第38回特別展「支配と宗教のはざまで」が開催されます。記念講演会は11月8日(11月29日に変更)午後2時より予定されています。佛日寺・黄檗宗・麻田藩が展示の中心になります。佛日寺からも出展しておりますので、一度ご覧ください。



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