●閑言語

51.平成25年9月23日(月) 地蔵盆の一席
 演題「閑言語」  住職(服部潤承)

 
 本日の法話の演題は、「閑言語」と言うことでお話しいたします。「閑言語」は、本来、九州柳川藩で使われている学術用語のようですが、本日は、「とりとめのない話」と言うことでお話しいたしたいと思います。
 暑い日が長いこと続いたと思いますと、雷が鳴ったり、大雨が降ったり、突風や竜巻が起きたりしています。これは異常気象と言う言葉だけでは片付けられません。
 ものごとには、原因と結果があり、そして、結果にいたるまでに縁が伴います。これを因縁と申します。暑い日も、雷も、大雨も、突風や竜巻も因縁によって起きたものでしょう。
 暑い日の因縁と言えば、オゾン層がフロンガスに破壊され、紫外線をまともに受けるようになりました。木々を伐採して、工場地帯や住宅地に変貌し、地中の保水や空気の再生浄化が鈍ってきました。土や草の道がアスファルトやコンクリートの道に替わり、太陽熱を思う存分吸収し保温しますが、雨は吸収されずに川となり大量の水が低いところに流れ込んで行きます。コンクリートや鉄やガラスの高層建築物は、風通しを悪くし、熱をこもらせ反射させています。エアコンの普及で、室内は非常に快適でありますが、室外に熱風を吐き出しています。車は、足の替わりをしてくれていますが、排気ガスCO2や騒音を撒き散らしています。工場は色々な便利な生活用品を生産していますが、排水・排煙・廃棄物が生じてまいります。このように異常気象・災害の因縁をさぐってまいりますと、枚挙に暇がありません。
 因縁の「因」は直接的なものであり、因縁の「縁」は間接的なものと言ってよいのではないかと思います。
 NHKの朝ドラ「あまちゃん」も最終章に入ってまいりました。「あまちゃん」は、日本の海女の最北端の様子を取り上げたドラマですが、3・11の東日本大震災にみまわれ、そこから立ち上がっていく様子が今、描かれています。
 その中で、主人公のあまちゃんのお祖母さんを扮する宮本信子さんが、東北弁で次のようなことを言っていました。
゛自然のいいところばかり利用して、自然の恐ろしいところに目をそむけ、そのうち忘れてしまう。それが人間の傲慢さ。゛
 的を射た台詞と言えましょう。いつの間にか、自然のたくさんの恵みに感謝しなくなりました。言い換えますと、神仏を敬うことを忘れてしまったと言っても過言ではありません。神仏を敬うどころか、逆に神仏をしもべ・召使いぐらいにしか思っていない振る舞いであります。いい人と結婚できますように。いい学校に合格しますように。お金が儲かりますように。------------。これらは、まだ良いとしましても、誰それさんが死にますように。どこそこの会社が潰れますように。-------------。このようなことが、神仏に聞き届けられるでしょうか。神仏は、殺し屋でも、潰し屋でもありません。ましてや、召使いや奴隷ではありませんので、虫のいいことなど聞き入れていただくはずがありません。そのようなことを神仏に願うだけでも傲慢と言えましょう。
 あまり良いニュースが聞かれない今日ですが、朗報がありました。 2020年オリンピックが東京に決定しました。関係者の努力は並大抵ではなかったかと推察いたします。各国からオリンピック招致のためのプレデンテーションがなされていましたが、どの国の誰が良かったと思われましたか。
 やはり、何と言っても日本国民を代表して、お礼を述べられた高円宮妃久子さまでしょう。当初オリンピック招致は他国と競い合うなど政治的な側面もあることから、宮内庁は、皇族が関わられることに慎重でありましたが、日本の皇族として初めて、オリンピック開催地選考を行うIOC総会に出席されました。招致委員会メンバーの制服を着用しないでの冒頭のスピーチで東日本大震災支援のお礼を、流暢にフランス語と英語でされ、最後に「チームジャパンがこれからプレゼンテーションを始めます。」とオリンピック招致を間接的に呼び掛けられました。開催地が東京に決定したのは、高円宮妃久子さまの奥ゆかしくて、控えめなスピーチが大きな力となったものと思います。
 ところで、30年前に2020年東京オリンピックを予言していたアニメがありました。漫画家で映画監督の大友克洋氏の名作「AKIRA」(講談社)。1982〜1990年に「ヤングマガジン」で連載された中に、近未来の東京でオリンピックを開催している様子が描かれています。また、フランスでは、週刊紙カナール・アンシェネに、腕や足が三本ある奇形の力士が爆発した原発施設を背景に相撲をとっているところを、防護服姿のリポーターが実況している風刺画が描かれています。何処にでも水を差す人はいますが、一抹の不安や心配が残りました。
 話は変わりますが、今日は、お彼岸の法要を務めました。お彼岸と言えば、六波羅蜜の徳行を行じる期間であります。布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六つの徳目であります。
 ごく最近、神戸大学の先生が、興味深い事例を発表されていました。少しご紹介いたしましょう。子供のしつけは、大人になった時、収入に格差が生じると言うことであります。つまり、子供の時に、しつけをしっかりされていると、社会人になった時には、高収入が得られると言うことであります。あまり、お金のことを申しますと、下世話になってしまいますので、ほどほどに致しておきます。
「しつけ」と言えば、裁縫の際に使う、言わば裏技のようなものであります。上手く縫い合わせるために、前もって「しつけ針」をうったり、「仮縫い」をしたりすることであります。また、縫い合わせた後、型崩れがおきないように、糸で「借り止め」をすることであります。もし、しつけがなかったら、変な縫い合わせになったり、変な折り目ができたり、型崩れが起きたりします。
 人も、着物や洋服を縫製するのと同じように、「しつけ」が必要ではないかと思います。  学校でも、色々な問題が発生していますが、この「しつけ」がなくなったのも一要因ではないかと思います。つまり、しつけ針や仕付け糸のない状態で縫製しているようなもので、縫い目が歪んだり、変形したり、縫い忘れが生じたりしているのでありましょう。  特に「嘘をつかない」「約束を守る」「我慢ができる」「よく勉強をする」などは、社会が求めている人間像で、子供の時にしつけられているか、否かで随分、収入にも格差が出ているそうであります。この四項目を注目しますと、お彼岸の徳目・六波羅蜜に挙げられているものと合致いたします。
 「嘘をつかない」「約束を守る」は、「持戒波羅蜜」を行じることであります。「持戒」とは、戒律をかたく守ると言うことであります。戒律に、「不妄語戒」と言うのがありますが、人を欺き、嘘をつかないことを言います。
 「我慢ができる」は、「忍辱波羅蜜」を行じることであります。「忍辱」とは、苦悩・迫害・侮辱に耐え忍んで、心を動かされないことであります。
 「よく勉強をする」は、「精進波羅蜜」を行じることであります。「精進」とは、身を清め、雑念をすてて、ある事に心を打ち込んで努力をすることであります。
 何れにしましても、「言うは易く、行うは難し。」ですが、しつけられている人には、その恩恵に浴することができます。お彼岸の功徳は、思わぬところにあるということでしょう。
 最後に、池田市立歴史民俗資料館第36回特別展のご案内をいたします。
 テーマは、特別展「お殿様の`゛御勝手 ゛事情==北摂麻田藩の財政再建==」です。
 会期は、平成25年10月18日(金)から12月8日( 日)までで、予定開催日数は38日間です。
 会場は、池田市立歴史民俗資料館で、池田市教育委員会が主催です。
 開催時間は、午前10時から午後 6時で、入館無料です。休館日は、月曜日(但し11月4日は開催)、火曜日、11月23日(祝日)です。
 特別展の記念講演会があります。日時は、11月10日(日)で、午後2時から3時30分の予定です。講師は、愛知学院大学の中川すがね教授です。
 佛日寺からも、佛日寺旧伽藍絵図・初代藩主一重公の画同像・二代藩主重兼公の画像・藩主使用のお膳戸お椀一式・十代藩主一貞公の和歌真筆の短冊を出展いたします。
 麻田藩は、赤字財政を黒字財政に転換した数少ない、全国でも珍しい藩で、今、注目されています。
 今や、日本の財政は、一千兆円の借金で、国民一人ひとりに圧し掛かっています。赤ちゃんからお年寄りまで一人当たり、一千万円の借金があると言われています。
 赤字財政を嘆くより、如何に黒字財政に転換するかを、考える良い機会になるかと思います。どうか、一度、池田市立歴史民俗資料館に足を運んでいただきたくご案内いたします。
 



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