●四方山話(よもやまばなし)

47.平成24年9月22日(土) 秋彼岸会の一席
 演題「四方山話(よもやまばなし)」  住職(服部潤承)

 
 この間、お盆が終わったと思いましたのにもう秋の彼岸を迎える頃になりました。
 毎年、この時期になりますと、、同じことを申しているかと、思いますが、秋とはいえ、残暑が厳しく、日中は真夏の陽射しでございます。 境内に植わっております白い花・玉すだれは年に2回咲きます。 例年、1回目に咲くのが、地蔵盆の頃。 2回目に咲くのが、秋の彼岸の頃であります。 ところが、1回目の開花が9月に入ってで、この2・3日前まで咲いておりました。 ところが、2回目の開花が始まりました。 自然の営みと言うのは、うまく帳尻を合わすものであります。
 この頃、雨の降り方が随分変わってまいりました。以前は、激しい降り方を「バケツをひっくり返したような」と言われていましたが、今年になって、「今まで経験したことのない」と言う表現に変えているようです。 地域によっては、洪水により浸水したり、大雨により山や崖の崩落があったりして、亡くなったり行方不明になったりしている方もいらっしゃいます。 改めてお見舞い申し上げます。
 ところで、ご本山の塔頭(たっちゅう)であります龍興院でも崖崩れがありました。 龍興院と申しますと、佛日寺と切っても切れない関係がございます。 佛日寺の初代住職を慧林禅師と申し上げます。 この慧林禅師は、晩年、ご本山の黄檗山萬福寺の住持(今で申します管長)になられました。黄檗山萬福寺の住持を退任後、隠居され余生を送られたところが、塔頭・龍興院であります。 宗門では、宿院と申しますが、他宗派では、宿坊と呼ばれているところです。宿院の住職のことを院主(いんじゅ)と申しますし、宿坊の住職のことを坊の主・坊主と呼ばれているのであります。
 本日の彼岸会に、龍興院の院主・北大興和尚がみえていらっしゃいます。 ご本山に用事がある時には、必ず宿院に立ち寄らせていただき、ご本山に登らせていただいております。 昨年も、ご本山で授戒会が開催され、佛日寺からも40余名の檀家の皆様が参加していただきました。 その際にも、龍興院の書院に上がらせていただき、暫く休憩させていただきました。
 その龍興院で、8月13日の大雨で、庭園の崖が崩落し、土砂が池を埋め尽くし、木々に覆われた借景が赤い地肌を見せております。 龍興院には、日頃、何かとお世話になっております関係で、佛日寺として見過ごすわけにはいかない状況であります。
 お彼岸前に、台風16号が九州西岸を掠めながら朝鮮半島に上陸、北上して行きました。 いつもでしたら、9月後半にもなると、西日本から近畿地方に向きを変えて行くのでしょうが、太平洋高気圧が強いためなのでしょうか、日本を避けてくれました。 それとも、これ以上、日本を痛めつけないで欲しいという願いから、台風16号は日本を逸れて北上して行ったのでありましょう。
 自然災害が頻繁に起こる中で、東日本大震災に遭って、気仙沼市立階上中学校の卒業式で、梶原祐太君が次の答辞をしました。その一部を紹介しましょう。
 「苦境にあっても、天を恨まず、運命に耐え、助け合って生きていくことが、これからの私たちの使命です。」
 私たちは、うまくいかなかったら、何かのせいにしてしまいます。 捨て鉢になって挙句の果てに、あきらめてしまします。 六波羅蜜の1つ、「忍辱(にんにく)波羅蜜」は、あきらめずに、踏ん張ることを言うのであります。
 忍辱と言えば、第30回オリンピック競技大会が8月12日に開会式が行われ、19日間の熱戦は終わりました。日本は大健闘し、金メダル7個、銀メダル14個、銅メダル17個、合わせて38個のメダルを獲得しました。 これまでの2004年のアテネ大会の37個を上回る記録であります。
 総メダル数世界ランキングでは第6位に相当します。 第1位はアメリカの104個、第2位は中国の88個、第3位はロシアの82個、第4位は開催国イギリスの65個、第5位はドイツの44個、第6位は日本で38個でした。東日本大震災・津波・原発事故・いじめ・外交等難問山積の日本、よく健闘しましたと賛辞を贈りたいと思います。
 バドミントン女子ダブルス決勝で藤井瑞希・垣岩令佳のフジカキ組は、銀メダルを獲得しました。 バドミントンの女子ダブルスは、予選リーグ突破を決めていた4チーム(中国1チーム、韓国1チーム、インドネシア1チーム)が、故意に負けようとする「無気力試合」を行ったとして失格処分になり、日本チームは繰り上がりで、決勝に進出できました。
 ロイター通信は、「この選手たちはトーナメントで有利な相手と対戦するために、意図的にネットに引っ掛けるなど負けるためのプレーをした。」とし、「恥知らずのバドミントン選手が自分の利益のためにわざと負けた。」と非難しました。 BBCとガーディアンも「中国と韓国のバドミントン選手が試合に勝とうとせず、スポーツ精神を傷つけた。」とコメントしていました。 この両国は、スポーツだけでなく色々な場面で姑息さが見受けられます。
 自衛官の小原日登美さんは、レスリング女子48キロ級で金メダルを獲得しました。 アテネ五輪の出場権を逃した際、精神的なショックから突発性の発作に襲われるようになりました。 鬱状態となり、実家に引きこもりました。 「五輪うんぬんではなく、レスリングを続けるかやめるか。」そこからはい上がっての勝利であります。 忍辱の極みと言えましょう。
 オリンピックの後、パラリンピックが開催されました。 8月29日から9月9日の12日間、障がい者スポーツの祭典として、オリンピックと同等に扱われる世界大会であります。 ところが、日本では、中継も少なく別枠で扱われているのが大変残念であります。
 イギリスでは、9月10日、ロンドン市内で行われた「凱旋パレード」には、オリンピックとパラリンピックで活躍したイギリス選手が約800人が参加し、オリンピック選手とパラリンピック選手が分け隔てなく同じオープントラックに乗ってのパレードでした。しかし、日本では、オリンピック選手だけのパレードでした。
 テレビ放送も、イギリスでは、オリンピック同様、公共サービス事業者「チャンネル4」局が、力を尽くして放送しました。その放送時間は累計400時間以上におよびました。日本では、放送時間が極端に少なかったことは言うまでもありませんが、『みのもんた』さんが朝ズバでパラリンピックの様子を伝えていましたのが大変印象深かったと思います。
 そもそもパラリンピックのはじまりはイギリスにあります。今から64年前の1948年、ドイツから亡命したグッドマン医師の提案によります。第二次世界大戦の傷痍軍人によるアーチェリー競技が行われたのが始まりと言われています。
 グッドマン医師は、「できなくなったことを嘆くよりも、やれることをやる。」のが、大切とし、その精神が下地になっております。いずれにしましても、イギリスは障がい者を社会に受けいれる度量の広い成熟した国と言えましょう。日本は、明治維新より、イギリスを見本に学んでまいりました。まだまだ学ぶところが有るように思います。
 最後に、今一番ニュースで話題になっているのが領土問題であります。
 昨年、日本の北方領土、北海道道東にあります択捉島、・国後島・色丹島・歯舞諸島は日本の固有領土でりますが、戦後1945年8月28日よりロシア(当時はソ連)によって、実効支配されています。そこに、昨年ロシア、メドベージェフ大統領が視察にやって来て、ロシア領であることを強調していました。
 島根県隠岐郡の竹島も韓国によって1953年4月20日より実効支配されていますが、今年、8月10日、韓国、李明博大統領が視察にやって来て、記念碑を建立したとのことであります。
 沖縄県にある尖閣諸島三島、魚釣島・北小島・南小島は、埼玉県在住の地権者から20億5千万円で、買い取り、国有化したやさき、中国全土で反日運動が起こり、デモや日本企業・日系企業への襲撃・破壊・放火・略奪が横行し、日本人に対して暴行が頻発しております。
 今、世界中が日本に注目しています。今、日本が試されているのでありましょう。最初に申しました「忍辱波羅蜜」がどれほど実践できるのかにかかっているものと、思うのであります。



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