●医食同源

令和4年11月掲載

 ※原文は縦書きのため漢数字で表記しております。

 小さい頃に「大切なものランキング」というものがあり、上位に「健康」が入っておりました。子供ですから、ゲームやお金や家族や友達などと思っているわけで、健康にピンと来なかった訳です。病気で寝込んだ際は、健康な方が良いなぁと思うわけですが、治ればすぐに忘れてしまいます。

 さて、黄檗宗の開祖:隠元禅師が伝えられたものの中に『普茶料理』がございます。次の八品からなり、いずれもお肉やにんにくなどの香の強いものは使われません。

  筝羹(シュンカン):旬の野菜や乾物の煮物など

  もどき:精進食材による鰻の蒲焼やカマボコに見立てた料理

  麻腐(マフ):胡麻豆腐の元祖

  寿免(スメ):揚げ物の入った淡味であっさりした澄まし汁

  浸菜(シンツァイ):季節感のある食材による淡味な浸し料理

  雲片(ウンペン):雲に見立てた野菜の葛あん煮

  油茲(ユジ):素材や衣自体に味がついた天ぷら

  水果(スイゴ):茶団子や果物

 黄檗宗が伝えられた江戸時代における日本の食文化は、基本的には「ごはん・味噌汁・漬物・お茶」つまり、米・豆類・野菜です。当時の庶民の食材と大きくかけ離れていないことから、受け入れられるのも早かったと想像できます。(※農民は稗や粟も。武士や大名は魚や卵も。当時、魚の衣揚げを天ぷらと読んでいたようです)

 しかし、海外から多くのものが入ってきて、特に戦後から大きく変わっていくこととなります。当時から小麦や油などはあったものの、海外製小麦・砂糖・油が多量に使われる西洋の食文化に押され、いまや現代人は朝にパン、昼にラーメン、おやつにポテトチップス、晩にステーキ、スイーツにショートケーキなど添加物なども多く入った食品が当たり前になっています。

 さて、日本の医療費は年々増加し、ここ三十年で二倍に膨れ上がり四十兆円を超えています。癌や糖尿病患者数なども同様に二倍となっているのです。若年層のアトピーや精神疾患なども含めこれ不健康の一因として、西洋型の食生活が挙げられるようです。

 食糧難が昨今騒がれています。小麦粉をはじめ、”日常に不可欠と思われる”ものの値段が上がっています。しかし、本当に必要不可欠なのでしょうか?

 西洋には西洋人の、日本には日本人の適するように発展してきた文化があるはずですから、今一度腰を据え、本当に大切なもの・日常で大切なものは何かを考え、取り戻すべきものを取り戻す時が来ているのではないでしょうか。両親共働きで帰りも遅く、子供が寂しくコンビニのパンを食べるのが日本の正しい姿なのですか?

 「普茶」とは「普く(あまねく)大衆と茶を供にする」という意味です。家族一緒にご飯を食べ、お茶を飲み、家族団らんを過ごしてあらゆる健康を取り戻すことが必要なのではないかと思います。


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