●トラ年

令和4年2月掲載

 ※原文は縦書きのため漢数字で表記しております。

 昨年は阪神タイガース惜しかったですね。前半は新人「サトテル」等の活躍もあり大きく勝ち越していたのですが、後半から三つ巴となり最終盤はヤクルトに優勝をもぎ取られてしまいました。私は優勝できそうな年だけ阪神ファンとなる身勝手なにわかファンですが、それでも大変悔しい思いをしました。
 さて、今年はトラ年ですのでトラにまつわる話をご紹介します。まず、トラの語源ですが「寅」と「虎」の二つの漢字があります。一つ目の「寅」は、古代中国の象形文字が元であり「矢を引っ張る」「弓を伸ばす」という意味がありました。それが「春になって草木が伸び始める状態」を意味するようになり、庶民に覚えやすくするために「トラ」という意味が付与され十二支の三番目となった様です。次に「虎」ですがこれも、中国の古代象形文字がもとであり、トラの体を表したものだそうです。次に「トラ」という読みですが、朝鮮半島から伝わった「ホーラ」という説や、毛の斑を意味する「ツル」という言葉からきているという説があります。それに日本語の「捕(とら)らえる」という言葉が加わり「トラ」になったと言われています。日本には居ないはずのトラですが、古代より「トラ」と呼ばれて畏怖されていたようです。
 この二月はお釈迦さんの命日である涅槃会(ねはんえ)がございます。涅槃会ではお釈迦さんが亡くなれた様子を描いた「涅槃図(ねはんず)」を吊り下げてお参りします。涅槃図には北枕で亡くなられたお釈迦さんを、佛さんやお弟子さん、菩薩、天部、様々な動物達が悲しみに暮れながらも取り囲んでいます。その中にもトラがいます。トラのとなりには黒斑(くろぶち)のある豹(ひょう)が描かれていますが、じつはこれは豹ではなくトラのメスとして描かれたものです。恐らくは当時の日本人は生きたトラも豹も見たことがなかったので、舶来した毛皮だけを見てメスと判断したのではないかと思います。今年は二月十三日に涅槃会をしますので佛日寺の大涅槃図をご覧頂ければと思います。
 最期に仏教説話よりトラにまつわるお話「捨身飼虎(しゃしんしこ)」をご紹介します。

 ある王国に三人の王子様がいました。ある時三人が山遊びをしていたところ、ちょうど通りかかった崖下に飢えた七匹の子を連れた母親トラが衰弱して今にも息絶えそうになっているのを見つけました。一番目と二番目の王子達は憂慮するばかりで勇気がありませんでしたが、三番目の王子は二人の兄に制止されながらも、自ら崖下に飛び降り、 その身体をささげトラ親子の飢えを救ったというお話です。

 この王子の行動は、なかなか我々常人に出来るものではありません。自分の命を投げ出して救おうとした心を慈悲心(じひしん)といいます。皆様も目の前で子供やご家族、恋人が危険な目に会いそうな時は、身を挺して助け出そうと思うのではないかと思います。その心を自分達とは関係の無い人や一切の衆生に向けられる人が仏さんです。なかなか仏さんの様にはなれませんが、皆様も一歩ずつ「トラい」して行きましょう。


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