●日日新たなり
令和4年1月掲載
※原文は縦書きのため漢数字で表記しております。
新たに年が明けました。真っさらな年はじめに気持ちもなんだか晴れやかです。さて、中国殷(いん)王朝の湯王(とうおう)の言葉を紹介します。
まことに日に新たに、日々新たにして、又日に新たなり
普段の日々は代わり映えしないように見えても常に移り変わっている。だから、毎日新しい心で過去のことは引きづらないで、新しい世界を生きていこう。という意味です。湯王はこの言葉を洗面器に張り付けて、顔を洗うたびに自らを戒めていたそうです。
萬福寺の修行道場では、朝目覚まし時計の代わりに「巡照版(じゅんしょうばん)」という木板を木槌(きづち)で打ち鳴らして次の偈文を大声で唱えます。
謹白大衆 (きんぺだーちょん)
生死事大 (せんすすーだ)
無常迅速 (うーじゃんしんそ)
各宜醒覚 (こーぎしんきょ)
慎勿放逸 (しんうふぁんい)
謹んで修行者に申し上げる。生死(しょうじ)は、最も大切な問題である。時間が移り変わるということはあまりにも速い。それぞれ目をしっかりと開いて、さぼらない様に生きていこう。という意味です。
また、夜には坐禅を終えて午後九時より「警策文(けいさくぶん)」を読み上げます。
是(こ)の日已(すで)に過ぎぬれば、命もまた随(したが)って減ず。小水(しょうすい)の魚(うお)の如(ごと)し。ここに何の楽しみか有らん。大衆當(たいしゅうまさ)に勤(つと)めて精進(しょうじん)し、頭(ず)燃(ねん)を救うが如くすべし。但(ただ)無常(むじょう)を念じて、慎(つつし)んで放逸(ほういつ)すること勿(なか)れ。
この日が終われば、その一日分自らの命も減っている。だんだんと干上がっていく水たまりの中に住む魚の様である。ここにどのような喜びを見出すことができようか。頭に火が着いてそのままにしていては大やけどをおってしまう。さっと振り払わなければならない。そのように修行者はしっかりと精進努力をしよう。ただ、世の中のすべてのものは移り変わるということを念頭において、さぼらない様に生きていこう。という意味です。
かの有名な良寛(りょうかん)さんは、最期に「阿(あっ)」と言う間に亡くなられたそうです(諸説あり)。この無常の世の中、気が付けば終わりを迎えてしまいます。相田みつをさんも「あとじゃできねんだよなあ いまのことは いましかできぬ」とおっしゃっています。
新年早々、戒めの言葉をご紹介しました。どうぞ、皆さんこの言葉をどこか見えるところに張り付けて頂き、朝でも晩でも結構ですので読み上げて自らに言い聞かせる時間をもって頂ければと思います。
TOP