●19回目の地蔵盆

 2.平成13年8月22日(水) 地蔵盆の一席
  演題「19回目の地蔵盆」 住職(服部潤承)


 おはようございます。今年は、地球温暖化のせいか、大変暑い日が続いておりますが、この暑さが、きっと秋の実りを齎(もたら)せることと存知ます。
 本日は、台風一過の地蔵盆です。佛日寺の地蔵盆は、水子供養の地蔵盆でござます。昭和57年に、佛日寺の開基、青木重兼公と佛日寺の初代、慧林禅師の300年遠忌の記念として、水子地蔵尊を建立いたしました。建立には、賛否両論がありましたが、建立に至りました一番の理由は、次のようなことでした。
 今は亡きマザーテレサカトリック修道女が来日され、長崎で基調講演をされました。その中で、「日本は、一見平和そうに見えるが、中絶で、幼い命がたくさん失われている。これでは、日本は平和とは言えない。中絶(殺生)がなくなってこそ、真の平和と言える。」と、おっしゃっていました。この話を、檀家総代の故上田二郎さんに、話してみましたところ、いたく感動され、広く一般に呼びかけられ、浄財を集められました。今は亡き上田二郎さんのご尽力と皆さまのご助力によって、佛日寺に水子地蔵尊が建立できたのであります。今年は、19回目の地蔵盆になるわけであります。
 この間、この近くの大阪教育大学付属池田小学校で、8人の尊い児童の命が一瞬にして奪われる惨劇が起こりました。明石では、花火大会に行く途中、陸橋で、9人の幼い命が圧死で奪われました。最近では、北海道で2人の幼い命が、侵入者により奪われました。また、つまらない大人の虐待、苛(いじめ)・暴力により、幼児・児童・生徒の将来ある尊い命が、次から次といとも簡単に奪われています。その上に、中絶があたりまえのようになって来ています。特に10代・20代の節操のない若者に多いようです。色々な理由があろうかと存じますが、1日900件の中絶手術をしているそうです。毎日900人が亡くなっているのです。
 戦後、「満年齢」で歳を数えるようになりました。お母さんのお腹の中にいる10(と)月10(と)日を、0歳と考えますので、中絶を誘因しているのかもしれません。10(と)月10(と)日を1歳と考え、中絶を殺生と考えることにより、今後、幼い命が少しでも失われないようにと願わざるをえません。
 佛日寺のお地蔵さんは、水子地蔵尊です。「水子」とは、水のように、はかなく流れ去った子供とか、この世を見ずして亡くなった子供という意味ですので、広い意味で子供を供養するお地蔵さんと言ってよいかと存知ます。
 供養の「供」は、お供物を供え、亡くなった子供を追慕し、成仏を祈ることであり、供養の「養」は、今ある子供の無事成長を願うものであります。
 先ほど、申しましたが、1日900人の尊い命が中絶手術によって、失われていることは悲しむべき現実でございます。近年、少子化時代と言われています。妊娠する女性はたくさんいますが、しかし、出産する女性は少ない。つまり、中絶した女性が多いと言うことであります。
 この佛日寺の水子地蔵尊が、亡き子の追慕と今ある子の成長、そして、男女の愛欲に溺れない倫理観を高めることができれば、なによりであります。



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