●インスタばえ

令和3年7月掲載

 ※原文は縦書きのため漢数字で表記しております。

 皆さまは「インスタばえ」という言葉をお聞きになったことはございませんか?自分が撮影した写真をインターネットに投稿するスマートフォンアプリ「インスタグラム(Instagram)」というものがありまして、ここで多くの人の目を引き「いいね」を貰える様な写真を「インスタばえ」といいます。雄大な自然や、お洒落な小物、何気ない日常など、各々目に付いたものを撮影することが好まれています。
 実は佛日寺も昨年の二月よりインスタグラムを開始しました。境内の草花や仏像や行事を中心に投稿しております。お花を撮影する時には、出来るだけ周りの景色を入れずに、被写体のみを「接写」することが「こつ」です。少々周りが汚くとも、そこだけを切り出せば、境内中にお花が咲き誇っている様な雰囲気の写真を生み出せます。 以前、「インスタばえ」で有名なお寺を拝観したことがありました。インスタグラムの風景を思い浮かべながら、いざ入山してみると、「なんだか、想像していたのと違うな」と意気消沈したことがあります。お寺にはインスタグラムで見た、切り取られたごく一部しか見どころが無く、それ以外には何ともつまらない殺風景なものでした。
 こんなことがあり八幡の道場に居た頃を思い出しました。道場では早朝のお勤め、坐禅、粥座(朝ごはん)の後に、寮舎作務(りょうしゃざむ)といいまして、各自の担当する場所を一人で掃除する時間があります。ある時、私はいつもと同じ場所を同じ様に掃除をしておりました。禅の道場では「無心(むしん)」が尊ばれ、頭よりさきに身体を動かすことを大切にします。ですからその日も頭で何も考えず猛スピードで廊下を雑巾がけしておりました。すると、老師に呼び止められ、「何をしとるんだ」。私は「見てわからないのか」と言葉に出さずに思いました。老師は続けて言います「同じ場所を同じ様にやってたらだめだ。雑巾がけで下ばっかり見てるんじゃないか、上を見てみろ、蜘蛛の巣が張っているじゃないか、こっちの階段の下はやっているのか、外からの葉が吹き溜まっているじゃないか。」と、物事を見るには「ピントを目の前に合わせる時と、全体に大きく合わせる時としっかりとバランスよく持たないといけない。同じところにピントをあわせすぎると、腐(くさ)ってしまうぞ」とお叱りを受けて、「はっ」とさせられたわけです。
 今回の「インスタばえ」とは直接関係のない思い出ではございますが、なにか繋がるところがある様な気がします。全体を疎かにせず、だからといって一部により過ぎない姿勢が大切なのではないでしょうか。これからはそのような写真を投稿出来たらと思います。どうぞ、佛日寺のインスタグラムをご覧になりたい方は最後のQRコードをスマホで読み込んで頂ければと存じます。今月は綺麗な蓮の様子をお届けしています。



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